SEOコンテンツ監査を定期的に行って自社の強みと弱みを明らかにし、コンテンツプラン企画に役立てましょう。この記事では、SEOコンテンツの監査を成功に導く実践的な方法を5つの簡単なステップで解説します。
コンテンツマーケティングの目標達成に向けてまずできることと言えば、新しいコンテンツを作成して公開することでしょう。
そこまでは良いのですが、作成したコンテンツが再訪問や再利用されないまま放置されてしまうことがよくあります。既存のコンテンツを更新して再利用することは、コンテンツマーケティング戦略として効率的な方法です。そのまま放置していてはもったいないことです。
コンテンツ監査を定期的に実施すると、改善すべきコンテンツや他のフォーマットで再利用できそうなコンテンツを判別することができます。
コンテンツ監査とは
コンテンツ監査とは、ウェブサイト上のすべてのコンテンツを体系的に解析・評価するプロセスです。コンテンツ戦略とコンテンツ開発ワークフローにおける強みと弱みを明らかにした上で、コンテンツプランを立て、現在のマーケティング目標に取り入れることを目指します。中小企業から大手企業まで規模を問わず、このコンテンツ監査はとても有益です。
この記事では、コンテンツ監査の基本となる、次の5つのステップについてご説明します。
- ステップ1:目標と評価指標の設定
- ステップ2:コンテンツ一覧の作成
- ステップ3:データ収集と解析
- ステップ4:アクションプランの作成
- ステップ5:コンテンツマーケティング戦略の修正
ステップ1:目標と評価指標の設定
コンテンツ監査は、時間のかかる大変な作業です。そのため、成功させるためには、始める前に目標を明確にしておくことが重要です。
まず、ビジネス目標を考えましょう。コンテンツ監査でどんなメリットが得られますか?達成したい成果は何ですか?
ここでは、ウェブサイトのコンテンツ監査に盛り込むと良い目標を数例ご紹介します。
目標1:SEOの成果を高める
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上位10位以内にランクインするSEO効果のあるウェブページを洗い出す
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更新が必要なコンテンツ、削除が必要なコンテンツを把握する
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内部リンクをチェックし、最適化する
目標2:オーディエンスのエンゲージメントを高める
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オーディエンスが求めるコンテンツの種類を見極める
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オーディエンスが興味を持っているトピックを把握する
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最も社会的にエンゲージメントを生むであろうコンテンツを見極める
目標3:コンバージョン率を高める
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訪問者にとって最高のユーザーエクスペリエンスが得られるページを抽出する
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最も多くのリードを創出するコンテンツを探し出す
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バイヤージャーニーのステージごとに、最適なコンテンツの種類を決める
目標が決まったら、コンテンツ指標と照らし合わせて適切な指標を選びます。コンテンツマーケティングの指標は、大きく分けて次の4つのカテゴリーがあります。
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SEO指標:オーガニックトラフィック、バックリンク、キーワードランキング、ドウェルタイムなど
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ユーザー行動指標:ページビュー数、平均セッション時間、直帰率など。
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エンゲージメント指標:いいね、シェア、コメント、メンションなど。
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販売指標:リード数、コンバージョン率、ROIなど。
例えば、最も人気があるトピックを把握した上で、そのトピックのコンテンツを増やしたい場合に解析するとよいのは、ユーザー行動指標とエンゲージメント指標です。SEOのパフォーマンスを重点的に確認していく予定であれば、バックリンク数から検索エンジンでのランキングを分析しましょう。
コンテンツの評価に用いるコンテンツ指標の一覧と、測定ツールを確認してください。
ステップ2:コンテンツ一覧の作成
URLと指標を一覧表に書き出す前に、まずどの種類のコンテンツを監査するのか決定しましょう。対象としては、ブログ記事、最新情報、啓発情報、製品説明、ランディングページなどの社内コンテンツや、社外公開物などがあげられます。その他、ビデオ、PDF、インタラクティブコンテンツ(例:クイズ、テスト、ゲーム)なども監査の対象として考えられます。
この記事では、ウェブサイトで公開されているテキストコンテンツの監査について取り上げます。
URLのリストアップ
まず、分析したいウェブページのURLをすべて洗い出して一覧表を作成します。
一覧表の作成には、SemrushのContent Auditのようなオンラインのコンテンツ監査ツールが便利です。サイトマップデータに基づいてコンテンツを素早く監査し、URLのリストだけでなく、関連する指標の測定結果が得られます。分析対象として、サブフォルダー/ブログなど、ドメイン内のセクションを指定することも可能です。
サイトマップはありますか?ない場合は、ツールを使って作成しておいてください。サイトマップには、コンテンツ監査に役立つことはもちろん、検索エンジンがウェブサイトの構造を理解し、重要ページを検出しやすくなるという利点があります。
こちらのブログ記事では、よく知られたサイトマップジェネレーターや、WordPressの無料プラグインを紹介しています。作成したサイトマップは、忘れずにGoogle Search Consoleに送信しておきましょう。
コンテンツを分類・記録する
URLを洗い出したら、基準を設けて分類しながらオンラインツールやスプレッドシートに記録し、チームメンバーで管理しましょう。
カテゴリーの例は次のとおりです。
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バイヤージャーニーのステージ(認知、検討、決定)
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コンテンツの種類(ブログ記事、マニュアル、商品説明、ランディングページ)
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コンテンツの形式(テキストのみ、画像/動画あり、CTAあり/なし)
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単語(文字)数
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公開日または最終更新日
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コンテンツハブ(またはクラスタ)
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著者(ライターが複数いる場合)
また、コンテンツごとのメタデータ(タイトル、メタディスクリプション、H1)をまとめて記録しておくと、確認や更新の時に非常に便利です。
さらに、指標を入力する列を設けて、ウェブページごとのデータを記録しましょう。下図は、コンテンツ監査のスプレッドシートの一例です。
ステップ3:データ収集と解析
データ収集は時間のかかる複雑な作業です。いろいろなソースからデータを集めて、スプレッドシートに手入力することになります。そこで、時間を節約したい場合は、目標や指標に応じて評価データを自動的に収集できるコンテンツ監査ツールを使用しましょう。
ウェブサイトのコンテンツを監査するSemrushのContent Auditツールでは、TwitterやFacebookのシェア、バックリンク、メタデータ、コンテンツ著者、コンテンツ長など、各URLの各種データを確認できます。
Google アナリティクスとGoogle Search Consoleのアカウントを連携させると、より詳細で広範なデータが得られます。連携によって確認できる様になるその他の指標は、セッション、平均セッション時間、ページビュー数、平均ページ滞在時間、直帰率、検索クエリなどです。
ページごとのセッションまたはページビュー数のデータを、クリックで切り替え表示できます。
Post Trackingツールでは、ゲスト投稿や第三者のウェブサイトで共有されたコンテンツのパフォーマンスに関するデータを確認できます。記事のキーワードランキング、シェア、バックリンク、参照トラフィックを毎日トラッキングできるツールです。
コンテンツ監査でより幅広いデータを取得したい場合は、他にも便利な解析ツールがあります。
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Google アナリティクス:トラフィック、エンゲージメント、コンバージョン率が高いコンテンツがどれか把握できます。また、マーケティング目標やビジネス目標の達成に対するコンテンツの貢献度を推定できます。
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SemrushのPosition Tracking:ターゲットキーワードのランキングをトラッキングします。高いSEO効果が期待できるコンテンツ(例:上位5位にランクインしたことがあるページ、上位に近いページ)を見つけるのに役立つツールです。このツールで見つけたページを更新すると、比較的短期間で検索エンジンでの順位を上げることができます。
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ContentWRX:ファイル種類、メタデータ、ページ別の詳細(画像、ドキュメント、ビデオ、スクリーンショット)などの情報が得られるツールです。解析結果のソートや、データをエクスポートしてオフラインで解析することも可能です。
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Contentsquare:ユーザーの行動からウェブページで機能している点としていない点を把握し、それをもとにカスタマージャーニーを解析できます。ページの要素について、インパクト、パフォーマンス、ユーザビリティ面を評価することで、今後更新が必要な箇所を見極めることができます。
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Semrush Site Auditは、主にランキングの向上を目的とする監査に適した、ウェブサイト上の技術的な問題を特定できるツールです。
下図は、指標を収集したスプレッドシートの例です。
コンテンツ監査データの見かた
サイトのコンテンツの状態を明確に把握したい場合は、コンテンツ指標を全体的に検証する必要があります。
例えば、トラフィックが多いにもかかわらず、直帰率が高く、セッションの継続時間が短いウェブページがあるとします。この原因は、興味のあるトピックに対して、ニーズに合う情報が得られなかったからです。この場合は、コンテンツの要素を一つ一つ評価し、ウェブページからユーザーが離脱する理由を突き止めましょう。問題点として考えられるのは、タイトルとコンテンツとの関連性、CTA、ページの読み込み時間などです。
また、バイヤージャーニーの各段階についても考慮が必要です。「認知」段階のコンテンツは、トラフィックは多く、コンバージョン率は低くなります。「検討」段階のコンテンツは、トラフィックは少ないかもしれませんが、リードは多くなります。
コンテンツアセットを評価する
各コンテンツを、収集したデータと指標を用いて目標に沿って評価し、次のいずれかのステータスに分類していきます。
保持
パフォーマンスが良好、関連性も保たれており、更新の必要はないコンテンツです。現在のコンテンツマーケティング戦略の一部として再利用することを検討してください。
例: エバーグリーンコンテンツ、成功事例、FAQ、ビジネスに関する一般情報。
アップデート
コンテンツ監査では、うまく機能していないウェブページが見つかることがあります。機能していないコンテンツは、効果的なものにする方法を考えましょう。また、情報が古く、改訂が必要なコンテンツが見つかることもあります。
例: 統計情報を含むブログ投稿、重要な内容だが情報が古い記事、トラフィック・コンバージョン率の低いコンテンツ。
削除
コンテンツを改善できない場合、またはリソース不足のため更新できない場合は、削除することも1つの選択肢です。過去に実施した季節ごとのマーケティングキャンペーンも、不要になっているかもしれません。
例: 特定のイベントや活動を扱ったコンテンツ、在庫切れ製品に関する情報、重複コンテンツ、過去のキャンペーンなど。
コンテンツ監査のスプレッドシートに、アクションプランを管理していくための「ステータス」列を追加します。
Content Auditツールを使うと、コンテンツが自動的に分類・整理されるので、さらに解析して、次にあげる対策を講じましょう。
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古い記事(24か月以上前に公開、最近の閲覧数はゼロに近い)は書き直すか削除する
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古いが最近のアクセスがあるページは、ランキングが上がるよう更新する
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前月に150回以上閲覧された新しいページは、手短に確認して改善策を考える
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200語未満の短い記事など、対策が必要な充実度の低いコンテンツを洗い出す
ステップ4:アクションプランの作成
コンテンツの評価が完了したら、コンテンツ改善計画を立てていきましょう。アクションプランは、目標、そして解析で得られた結果をもとに立ててください。
アクションに優先順位をつける
URLごとのアクションプランを作成する前に、ステップ1で設定した目標を振り返りましょう。コンテンツプランへの取り組みは、すべてビジネス目標の達成につながる内容でなければなりません。
次に、必要な労力を鑑みた上でビジネス目標が達成可能かどうかを基準にして、アクションの優先順位を決めます。SEOの成果の向上につながるアクションの例は次のとおりです。
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記事にリンクをいくつか追加する。簡単な作業で、大きい成果が得られるかもしれません。
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本格的な電子書籍(e-book)を作成する。かかった労力ほどの結果が得られない可能性があります。
目指す結果とそれに必要なリソースとを比較検討した上で、スプレッドシートに優先順位の列を追加します。
URLごとにアクションプランを作成する
優先順位リストを整理したら、コンテンツごとにアクションプランを作成しましょう。ここでは、ページごとにコンテンツ監査を実施する際、作業フローに盛り込みたい実用的なヒントを紹介します。
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コンテンツを再利用する:別々のコンテンツを組み合わせたり、フォーマット(電子書籍、インフォグラフィックス、スライドなど)を変えて公開したりしましょう。
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コンテンツを書き換える:パフォーマンスが低いブログ記事に、新しい例、ヒント、実用的な内容などを追加してみましょう。
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コンテンツを充実させる:既存の記事により詳しい情報を追加しましょう。3000語以上の長い記事は、平均的な長さの記事と比較して、3倍のトラフィック、4倍のシェア、3.5倍のバックリンクを獲得していることが調査で判明しています。
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コンテンツの内容を最新情報にする:記事を完全に書き直さなくても良い場合もあります。情報(例えば、新しい統計やトレンド、新製品の概要)を更新するようにしましょう。
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コンテンツを再構成する:H2やH3タグを活用して、明確で論理的な構造にしましょう。ユーザーにとってもボットにとっても解釈しやすいコンテンツとなり、トラフィックの増加につながります。ハウツー記事は、構成がしっかりしていることで、強調スニペットにランクされる可能性が高くなります。
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CTAを更新する:ブログやその他のウェブページに、古くなったバナーがないか確認しましょう。あれば、適切な内容に更新しましょう。コンテンツマーケティングファネルが活性化し、コンバージョン率の向上につながります。
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動画を追加する:Wyzowlの調査では、ビデオマーケターの87%が、動画を取り入れるとウェブサイトへのトラフィックが増加すると回答しています。さらに、81%が、ウェブページにビデオコンテンツがあるとユーザーの滞在時間が長くなると回答しています。
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画像を追加する:コンテンツの魅力が増し、Googleの画像検索を経由した自社ウェブサイトへのトラフィックにつながります。ウェブページに動画や画像を組み込むこと、SERP機能に表示される可能性が高くなります。
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メタデータを最適化する:タイトル、メタディスクリプション、H1タグを書き換えてみましょう。ユーザーや検索エンジンにとって、より自然で魅力的なキーワードにしてください。
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内部リンクを最適化する:ブログ記事内に、関連するトピックについての新しい記事へのリンクを追加しましょう。ウェブサイトの構成が改善され、直帰率を下げることができます。また、バイヤージャーニーの流れに沿って内部リンクを最適化するのも良い対策です。「認知」コンテンツは「検討」コンテンツに、「検討」コンテンツは「決定」コンテンツにリンクさせます。逆方向にリンクしないよう注意してください。
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削除してしまったページには、301リダイレクトを設定してください。「ページが見つかりません」という表示を回避でき、ユーザーエクスペリエンスの向上につながります。
- Google Search Consoleから、コンテンツの更新についてGoogleに通知しましょう。Search Console内のURL 検査ツールでは、更新されたばかりのウェブページのインデックス登録をリクエストすることができます。
コンテンツ監査後のチーム作業の効率化には、Content Auditの「ワークフロー」機能を使いましょう。タスクを追加したり、各URLの現在の指標データを保存したりすることができます。
記事のステータスが自動的に「進行中」に変わり、指標の推移をトラッキングしながら、ツール上で進捗を直接評価することができます。
ステップ5:コンテンツマーケティング戦略の修正
ウェブサイトのコンテンツ監査では、長期マーケティング戦略を念頭において進めていくことが重要です。成功事例や失敗事例の両方をトラッキングすることで、ターゲットオーディエンスに別の方法でアピールする、オーガニックリーチの向上を目指してアセットを調整する、コンバージョン率を向上させる、など、コンテンツ戦略の方向性を変えていくことができます。
成功事例のメモをとって、全体に反映させましょう。うまく機能していないコンテンツがあれば、競合他社の成果がでている同等のコンテンツと比較して、改善すべき点を探しましょう。
コンテンツマーケティング戦略は、少なくとも年に1回は見直しが必要です。戦術や取り組みが、企業の現在の目標に合っているかどうか確認してください。もし、変動が激しい業界であれば、月1回や四半期ごとなど、評価の頻度を多くしてください。業界の変動に対応しながら、絶えずオーディエンスにリーチし、エンゲージできる新たな方法を見つけましょう。
今日うまくいったからといって明日もそうとは限りません。調整を続けることも必要です。少なくとも年に2、3回はコンテンツ監査を実施して、ビジネスにとって有効な調整や取り組みができているかを確認しましょう。
ウェブサイトコンテンツ監査チェックリスト
最後に、ウェブサイトコンテンツ監査の実施方法をリストにまとめましたので、参考としてご活用ください。
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コンテンツ監査でのビジネス目標を明確に設定しましょう(SEOの成果、オーディエンスのエンゲージメント、コンバージョン率の向上など)。目標に対して適切な指標を選びましょう(オーガニックトラフィック、直帰率、シェア、ROIなど)。
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コンテンツのURLをリストアップして分類しましょう(バイヤージャーニーのステージ、コンテンツタイプ、著者、その他重要カテゴリー)。
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コンテンツアセットのパフォーマンスに関するデータを解析ツールで収集しましょう。選定した指標でコンテンツアセットを評価し、「保持」、「アップデート」、「削除」のステータスに分類しましょう。
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最初のステップで設定したビジネス目標に基づき、アクションの優先順位を決め、各コンテンツのアクションプランを作成しましょう。
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少なくとも年に1回は、監査結果に基づいてコンテンツ戦略を調整しましょう。
コンテンツ監査はもう実施しましたか?どのようなアプローチをとりましたか?どんな点がうまくいきましたか?監査の工程でどんなことが分かりましたか?あなたの体験談を、ぜひコメント欄で教えてください!