競合サイトの分析はSEO対策において重要です。競合他社へのアクセスの流入元はどこが多いのか?ターゲット層の取り込みができているのか?主なマーケティング業界の動向を反映しているのか?などを知りたいときに使えるのが、SemrushのTraffic Analyticsです。この分析ツールを使えば、競合他社サイトへのトラフィック流入経路、アクセス元地域、訪問者の行動などの統計情報を分析できます。
オンライン上で競合情報を収集する時に重要な指標の一つに、他社サイトのアクセス数があげられます。デジタル面の競争力を高めて成長を加速していくには、競合他社やパートナー企業の候補が運営するウェブサイトへのトラフィック、トラフィックを促進するデジタルマーケティング戦略、さらに、新たなトレンドなどの知識が、決定的な打開策といえます。
SemrushのTraffic Analyticsツールでは、デスクトップとモバイルデバイスからのトラフィック数の内訳が一覧表示されます。本記事では、ツールの使い方を見ながら、競合他社の分析、パートナー候補となる企業の選定、市場の全容を把握するなど、具体的な使用例を解説します。
Semrushで競合サイトのトラフィックを見ることができるというのは本当ですか?
はい、本当です。自社のトラフィックを知るには、Google アナリティクスが最も包括的、そして正確なツールです。ただし、競合他社のトラフィックは確認できません。競合他社のウェブサイトのトラフィックとの比較には、Google アナリティクスは使えないのです。
競合サイトのトラフィックを分析したいときに使えるのが、SemrushのTraffic Analyticsです。Google アナリティクスは、トラフィックを内部的に追跡しますが、SemrushのTraffic Analyticsツールは、機械学習アルゴリズム、ビッグデータ技術、クリックストリームなどのデータを活用して、競合サイトのトラフィックを解析します。
これら2つのツールの特徴や違いを押さえておくことは重要です。自社サイトのトラフィックを調べたいなら、Google アナリティクスが最適です。そうではなく、競合他社のトラフィックを調べるのが目的であれば、Traffic Analyticsツールを使うことで、競合分析に有益な高品質のデータが得られます。
競合サイトのトラフィック分析を始めよう
データを読み取る際の正しい見方を押さえておきましょう。直帰率が高い場合、求める情報が得られない可能性があります。リファラー(他サイトから)からのトラフィックが多い場合は、パートナー構築がうまく機能していると考えられます。このようにどの指標を見ればいいのかを知っておくことは重要です。
データから読み取れる競合他社の情報は、競合他社を超えるトラフィック数を獲得したいときに役立ちます。ここからは競合他社の情報の見方を解説します。
- オーディエンス数や成長度を推定する
- トラフィックの急増を検知し、原因を探る
- 競合他社のトラフィックを観察、トレンド(持続的)による上昇、またはスパイク(一時的)かを判別する
- 競合サイトでの訪問者の利用体験を把握する
競合サイトのトラフィックを計測する
トラフィックに関するさまざまな情報を収集しておくと、それを基礎に、より詳細な調査へと進むことができます。競合サイトのトラフィックを、Traffic Analyticsの概要レポートで確認し、数値の増減の様子を詳しく見ていきましょう。
上図の2つのセクション(赤枠内)は、target.comへのトラフィックの動向(2023年5月)です。
最初の数値は、競合サイトへのセッション数で、そこからオーディエンスの規模が予測できます。月間のユニーク訪問者数は、成長度の目安となります。数値の横に表示される数値(緑または赤)は、前月比の成長率です。
トラフィックの時系列推移を確認する
トレンドグラフには、トラフィックデータが時系列で表示されます。以下のグラフは、target.comへの全デバイスからの訪問者数の推移を過去1年以上示しています。
トラフィックデータが11月、12月で高くなっていて、そのあとは下落しています。こうした上昇や下降が見られる場合、対策を強化していくにあたっては、その要因を考えることが必要です。
Targetの場合、10月から12月に毎年発生するスパイクは、クリスマス商戦によるものと思われます。異常を示す現象ではなく、季節的な動向です。
ただし、2020年2月の増加は、コロナ禍が始まったことが要因と思われます。この時の上昇は持続しており、購買行動に恒久的な変化をもたらしたようです。
複数ウェブサイトのカスタマーエクスペリエンスを比較する
複数の競合サイトについて、アクセス数を比較する方法はあるのでしょうか?Traffic Analyticsでは、最大5つのウェブサイトのデータを一覧表示できます。ここではWalmartと比較してみましょう。
訪問者数を見ると、WalmartがTargetより明らかに上です。ただし他の数値は違っています。過去6か月間の直帰率を見ると、Targetのほうが顧客の求める情報を提供できているようです。
Walmartはというと、逆の現象が見られます。訪問者数は多いものの、直帰率が高い傾向にあります。この要因として次のことが考えられます。
- ユーザーの興味を引く、役立つ情報が不足している
- 販促内容が、思ったより魅力に欠ける
- 製品やサービスの販売地域外からのトラフィック
ウェブサイトへのトラフィック数で他社を上回るには、直帰率や滞在時間などの数値が、顧客のニーズに応えられているウェブサイトかどうかを知る目安となります。直帰率、訪問数、滞在時間などのデータをSemrushで確認し、トラッキングを続けることで、顧客体験について有益な情報が得られます。
他社サイトへの流入経路とマーケティング戦略を知る
競合他社が、SEO、PPC、SMM、コンテンツ・PRなどにどのような優先順位で取り組み、オーディエンスとやり取りしているかを知るには、Traffic Analytics概要レポートが役立ちます。
ここからは以下の内容を解説します。
- 競合他社のトラフィック獲得戦略を詳しく解析する
- ユーザージャーニーを追跡し、関連サイトやユーザーのニーズを明確に把握する
- 競合他社への主な流入元サイトを把握する
- ユーザージャーニーに基づき、広告掲載先の可能性を探る
- 競合他社の有料広告およびSNSプロモーションのランディングページを発見する
- サブドメインやサブフォルダを確認して、競合サイトや市場動向を分析する
ユーザージャーニーを追跡する
トラフィックジャーニーレポートでは、競合サイトへトラフィック流入経路、流入元となるウェブサイト、ユーザーが次に訪問するウェブサイトがわかります。Airbnbとその他競合サイトのデータを示す、こちらのグラフをご覧ください。
直接のトラフィックではAirbnbが上回っているものの、リファラートラフィックでは400万人以上、検索エンジンからのトラフィックでは100万人以上の差をつけて、ExpediaがAirbnbを上回っています。この結果から、ブランドとしての知名度についてはAirbnbのほうが高く、バックリンクとオーガニック検索に関しては、ExpediaがAirbnbより優位にあることがわかります。
トラフィックジャーニーのグラフからは、ユーザーの流入元と、比較中のサイトの中で次に訪問したウェブサイトかがわかります。
トラフィックジャーニーのチャートには、競合5社のデータを表示できますが、ここではExpediaのみに注目しました。そして、リファラートラフィックと検索結果からのトラフィックが非常に高い理由を探りました。
前述のとおり、検索ボリュームの多さとキーワードランキングから、Googleからのトラフィックが多いことは納得の結果です。
ウェブサイトのトラフィックのうち、clicktripz.comからの割合が9%ですが、これは2021年10月から11月の間に倍増しています。離脱後は、Tripadvisor.comとBooking.comにトラフィックが集中していますが、数値的には1%を下回っていることから、Expediaのプラットフォームの問題ではなく、訪問者が割引を比較しているためだと考えられます。
レポートのトラフィックジャーニーの詳細では、トラフィックの流入元と流出先サイトに関する詳細が確認できます。
グループトラフィックスプリットの列は、Semrushのウェブサイトトラフィックデータから、トラフィックの内訳をグラフ表示します。グラフの棒にカーソルを合わせると、各サイトへの正確な訪問者数と割合を確認することができます。
上位ページ、サブドメイン、サブフォルダーの詳細を確認する
競合サイトの各ページ、サブドメイン、サブフォルダー別の詳細なデータについては、上位ページのレポートで確認できます。このレポートでは、ページビューとユニークユーザーのデータ、各ページのトラフィック流入元の数値が表示され、さまざまな条件で並べ替えて表示することができます。
ソーシャルメディアや有料広告で宣伝しているページなどの条件で、ページを指定して検索する場合は、トラフィック流入元でフィルタリングすると、目的のページを上位に表示させることができます。
また、ページで絞り込み、項目をクリックして表示させることもできます。この例では、「休暇(vacation)」という単語で絞り込んでいます。
図は、「休暇のプラン」というページを選択し、グラフを表示させたもので、SNSとリファラーからのトラフィックが多いことがわかります。この情報から、Vrboがソーシャルメディアマーケティング戦略に取り組んでいることがわかり、バックリンクの内容を分析する手がかりとなります。
また、Traffic Analyticsツールでは、サブドメインやサブフォルダーから競合サイトの構造を理解し、各セクションのトラフィック傾向を追跡することができます。
この表では、Airbnbの特定のサブドメインのトラフィック数から、人気度を知ることができます。この例では、スペイン、クロアチア、フランスのサブドメインがトラフィックの上位を占めています。
サブフォルダーもほぼ同様ですが、トラフィック数、流入元、動向などを詳細に確認することができます。
「stays」サブフォルダーへのトラフィックは、有料トラフィックと検索トラフィックがほとんどです。そして、このサブフォルダー内では、ラスベガス、ナッシュビル、ニューヨークが上位ページであり、この市場で人気の高い旅先であることがわかります。また、グラフの数値が高い部分は、年明けと夏に旅行する人が多いことがわかります。
Airbnbと競合する企業であれば、この情報をもとに、成長見込みのあるポイントを把握したり、差別化したマーケティング戦略の強化を行なったりできます。
トラフィックデータからパートナー構築を模索し、成長につなげる
競合他社の調査の他にも、SemrushのTraffic Analyticsから得られるデータは、ビジネスの拡大、見込み客のクロージング、強力かつ実りあるパートナー関係の構築に役立つ情報源となります。
ここからは以下の内容を解説します。
- 自社と競合他社の共有オーディエンスを比較する
- 共有オーディエンスが頻繁に利用しているその他のウェブサイトを発見する
- 業界別にフィルタリングし、パートナー関係構築の機会を探す
- 国別のトラフィック数を確認し、新興市場や成長機会を模索する
- 各国のトラフィック動向を時系列で追跡する
- 競合サイトのページの中で、各国のオーディエンスに人気の高いページを確認する
オーディエンスに関する情報が得られる競合他社のトラフィック分析ツール
オーディエンスのインサイトレポートでは、関連市場のオーディエンスが自社や競合他社とどう関わっているかを理解できます。
重複オーディエンスグラフでは、競合他社のオーディエンスの規模と、自社と競合他社のオーディエンスの重複の度合いがわかります。以下は、米国の主要5紙のオーディエンスについてまとめたグラフです。
円が一番大きいのはニューヨーク・タイムズで、訪問者数は、月間1億2930万と、オーディエンスが最も多くなっています。ワシントン・ポストとは円の重複部分が最も広く、ニューヨーク・タイムズへの訪問者2200万人がワシントン・ポストにも訪問していることを示します。
オーディエンスが少ない他の新聞社とニューヨーク・タイムズとの関連性を確認するには、グラフの右側にあるチェックボックスを選択しなおします。
オーディエンスが少ない2紙と最大の新聞社を比較します。このグラフから、ウォールストリート・ジャーナルのほうがロサンゼルス・タイムズよりも、ニューヨーク・タイムズとの共有オーディエンスが多いことがわかります。また、ウォールストリート・ジャーナルとロサンゼルス・タイムズは共有オーディエンスが非常に少なくなっています。
共有オーディエンスについてさまざまな角度で検討すると、競合他社との提携や、特定のオーディエンスをターゲットにして自社のトラフィック増を図るためのアイデアが得られるかも知れません。
レポートの、オーディエンスのインサイトでは、オーディエンスがオンラインで滞在する場所に関する追加情報が表示されます。ここでも、オーディエンスが少ない2紙について、オーディエンスがスポーツ記事を読みたい時にどこに向かうのか、グラフにフィルターをかけて確認しました。
オーディエンスのインサイトのレポートを見ると、ウォールストリート・ジャーナルとロサンゼルス・タイムズのウェブサイトを訪問する人のうち、12.37%がespn.comに、10.55%がcbssports.comにアクセスすることがわかります。
これは、パートナー関係構築の戦略として有効な情報です。例えば、新聞社のスポーツ欄のマーケティングチームは、オーディエンスの取り込みを目指して、ESPNやCBSスポーツへの広告掲載やパートナー関係構築の機会を検討すると良いでしょう。
競合他社のウェブトラフィックをグローバルに追跡する
地理分布レポートでは、世界中のオーディエンスに関する情報を確認できます。競合他社のグローバルなウェブトラフィックの全体像を把握するには、まずトラフィックマップを確認しましょう。ここでは、ガーディアンのグローバルトラフィックを確認します。
ガーディアンのトラフィックは、大部分が米国と英国によるもので、総数では英国が勝っています。この地図では、ウェブサイトのトラフィックが10%未満の国は水色で表示されています。その場合、その国の市場は小さいながらもオーディエンスが存在することを示しています。
トラフィックの時系列推移の詳細を表示するには、国別トラフィック推移グラフまでスクロールしてください。この例では、過去5年間で最も高いトラフィック数と成長が見られたいくつかの小規模な市場に注目しました。
このグラフでは、各国の成長トレンドが明確に表示されています。例えば、2020年9月、オランダからのトラフィックが急上昇している箇所をご覧ください。この時点のこの市場の状況について、さらに調査すると何か分かるかもしれません。
そして、国別トラフィックグラフは、特定地域のデータを示しています。国ごとに上位ウェブサイトページを示すドロップダウン・タブがあります。
オランダの市場を改めて考えてみると、市場は拡大傾向にあり、今後の成長に向けてターゲットとできそうです。また、オランダの上位ページ(国際ニュース、イギリスのスポーツ、アメリカの政治)から、この市場に進出する新聞社は、類似するコンテンツの提供を検討するとよいかも知れません。
競合サイトのトラフィック分析はあくまでもスタート地点
競合サイトのトラフィックを分析する方法を探していて、この記事にたどり着いた皆さん。目的以上の情報を発見していただけたでしょうか。Semrushで競合他社ウェブサイトのデータを分析する方法を知ることは、あくまでも始まりにすぎません。他社ウェブサイトのトラフィックを確認する方法がわかることで得られた数字から、より深い情報をつかむことができます。
トラフィックについて良質な理解ができれば、市場について知り、競合を追い抜いて、オーディエンスニーズに応えることができます。数値を確認することは有益ですが、SemrushのTraffic Analyticsツールでできることは、ユニークビジター数や直帰率の表示だけではありません。Semrushの競合他社分析機能は非常に充実しています。Traffic Analyticsと.Trends拡張ツール一式は、市場調査のすべてのニーズに対応する完全なソリューションとなっています。ぜひお試しください。